大学では法学を学びましたが、音楽の世界に魅了され、卒業以来現在に至るまで二十数年間、ミュージシャンとして活動しています。音楽のジャンルを問わず、演奏や楽曲提供、音楽学校でのインストラクターなど幅広く活動してきましたが、フリーランスという立場上、どうしても収入に増減があります。それで生活費を確保するためにアルバイトや契約社員として音楽と両立できる仕事を続けてきました。ところが契約社員として働いていくうちに責任の大きな仕事が増え、徐々に音楽に費やせる時間が減ってきました。それに伴って精神的にも余裕がなくなってきたのを感じ、転職を決めたんです。

現在お世話になっている派遣会社には、知人の紹介で登録しました。派遣なら事前に具体的な仕事の内容を知ることができ、条件を指定して仕事探しができると思ったのです。登録時には、面接担当者が、わたしの音楽への思いやライフスタイルを熱心に聞いてくれ、とても心強かったですね。音楽活動と両立するために、負担が大きい仕事は難しいこと、勤務時間や勤務場所にも希望があることなどを率直に伝えましたが、それについても理解してもらえたのです。それで、この会社を信頼してお任せしようという気持ちになりました。実際に現在の派遣先も「ここなら、あなたに合う」とすすめてもらった職場です。
現在はあるメーカーの工場で、電気メーターの部品の品質を検査する仕事をしています。一緒に業務にあたるのは、そのメーカーでこの道40年という大ベテランの社員さんです。いろいろと教えてもらいながら和やかに働いています。品質検査は一見単純作業のようですが、現在の工場では扱う部品の種類が多彩で変化があり、飽きることはないですね。納期によって仕事量が増えることもありますが、基本的に残業はなく休日もしっかりとれるので非常に働きやすいです。また、40年も同じ仕事を続けてこられた社員さんの言動にはやはり説得力があるんです。仕事に対する姿勢など学ばせていただくことが多いですね。

帰宅後は、自宅でギター教室を開いています。生徒さんは高校生から50歳代の方までさまざまですが、わたし自身音楽を楽しみながら教えています。教室の後は友人と飲みに行ったり楽曲制作に励んだりと充実した時間の使い方ができています。今の仕事を始めてからの一番の変化は、昼間仕事をしている自分と音楽活動をしている自分とを分けて考えないようになったことです。仕事と音楽の両方のバランスがとれて初めて自分らしく暮せるのだと実感しています。逆説的ですが音楽以外の時間があることでかえって音楽に余裕をもって取り組めるようになりましたし、現在の生活に満足感を感じられるようになりました。
振り返ってみると二十数年、音楽という夢をあきらめずにやって来られたわたしはある意味、とても恵まれているのかもしれません。現在の日本では派遣をはじめ、正社員以外にもいろいろな就業スタイルが可能ですから、生活のために夢をあきらめないで済んだといえます。音楽はわたしにとって一言で言うと「成長のものさし」です。今もまだまだ成長の余地はありますし、音楽の世界には挑戦してみたい分野がまだたくさんあります。同時に派遣先での仕事についても、きっと何かの意味があって今、自分に与えられている仕事だと大切に感じています。今後も仕事と音楽の2つをバランスよく両立していきたいですね。