美大卒業後デザイン事務所でデザイナーとして3年間働きました。紙パック入り飲料や食品のパッケージなど国内では知名度の高い商品のデザインに携わることができ、充実した3年間だったと思います。ただ、深夜残業はあたりまえ、という職場環境に次第に疑問を抱くようになりました。また残業手当に上限があり、残業しても手当がつかない場合があるのも正直不満でしたね。加えて毎日の仕事がどうしてもPC操作中心で、本来自分が好きなはずの絵画などの作品制作から遠のいてしまっていることも残念でした。そこで思い切って仕事をやめ、2ヵ月間、イタリアに留学することにしたんです。

イタリアではアパートを借りて先生の工房に通いながら思う存分、絵画や銅版画の制作に取り組みました。わずか2ヵ月間でしたがこの留学で自分を見つめなおすことができた気がします。将来の夢をまだはっきりと見つけているわけではないのですが、現在は将来のために必要な経験や資金を得るための大切な準備期間だと、思うようになったんです。それで帰国後は、対価のない残業をして時間を無駄にしないためにも、自分の働いた対価がはっきりと数字で分かる「時給制」で働きたいと考えました。加えてデザインの分野でさらにキャリアがつめる職場を探すことにし、結果として選んだのが派遣という働き方でした。
現在はメーカーでデザイナーとして働いています。会社の主力商品はホテルのアメニティグッズ。わたしは常時10件程度の仕事を担当していますが、職場では商品ごとに担当がはっきり分かれているんです。一つの仕事をほぼ専任できるので、マイペースで働けるのがわたしには向いています。ほかに自社HPの管理も担当していますし、同じデザイナー職でも職場が変わったことで仕事に幅が出てきたように感じています。パッケージデザインの魅力は、使用される期間が広告デザインなどに比べて長いこと。だから市場で自分のかかわった商品を見ることができ、お客さまに使ってもらえていると実感できる喜びがありますね。

今の職場でも毎日2時間程は残業をします。でもあくまでも自主的な残業で、自分なりにキリのいい所まで終えておこうという気持ちでやっています。それに時給制なので残業した分の対価がはっきりと目に見え、お給料にも確実に反映されるので励みになりますね。また週に1度は残業を早く切り上げてイタリア語教室に通っています。将来またイタリアに行きたいという気持ちもあるので、今のうちに準備しておこうと思ったからです。このように平日は忙しくて帰宅後もそんなに自由な時間はありませんが、その分、休日は気持ちを切り替えて友人と会ったり買い物に出掛けたりしてリラックスするようにしています。
わたしは職場はもちろん住む地域にあまり固執するタイプではありません。必要があればいつでも身軽に動ける人でありたいと思っています。その意味でも派遣というスタイルが気に入っています。もちろんパッケージデザインの仕事は好きなのでこれからも続けたいと思っていますが、「ものづくり」にかかわることであれば、パッケージデザインだけにこだわるつもりもないですね。もしほかにやりたい仕事やチャンスが見つかれば、国や地域にこだわらず挑戦していきたいのです。そのために必要なキャリアと資金を今の仕事を通じて自分のものにしたいと思っています。