
「番外編 派遣会社と派遣スタッフ。法改正後注目される2つの課題」
- 受付期間:2015年11月24日~2015年12月2日
- 今回はたらこねっとでは、「労働者派遣法改正」について派遣会社向けアンケートを実施しました。 派遣法改正によって、派遣スタッフにとってはより働きやすい対策が盛り込まれるようになりましたが、その対策として、派遣会社は様々な義務や課題が与えられました。その中で今回特に注目したのが「雇用安定措置/教育・キャリアアップ制度推進」についてです。 新たに与えられた義務への不安も見られましたが、多くの派遣会社が派遣労働者の期待に沿うべく進行していることがわかりました。 今回は実際に活動している派遣会社の生の声を紹介すると共に、派遣労働者の期待・不満と照らし合わせて対策の動向を比較していきます。(有効回答数:508)

法改正で生じた不安な要項を聞いてみたところ、「キャリアアップ措置の義務化」に注視する企業が63%、「雇用安定措置の義務化」については49%が不安と答える結果となりました。なぜ不安に思うか聞いてみたところ、まだ施行したばかりというところもあり、具体的にどこまで対応すべきか検討中という声が多く寄せられました。しかし派遣会社の施策検討は着実に進んでいます。今後の展開に注目が高まります。


【キャリアアップ支援に対する意見】 |
仕事の内容もそれぞれ違うため、すべて自社研修では限界がある。それぞれのスタッフに沿った支援の適正化を考えた計画を立てる必要がある。 |
キャリアアップ支援自体の効果、どの程度の求職者からの求められているのかが不透明。実際キャリアップをしたい方ばかりではないので、その実態を踏まえ教育訓練を検討する必要がある。 |
定期的な面談はしているが、キャリアアップコンサルティング自体どの程度のことを行わなければならないのかよくわからない |
担当者を選任で置くことが望ましいと考えているが、キャリアアドバイザー有資格者等、適任の人材を採用できるかも重要。 |
実際にスタッフが、何を望んでいるかが一番大切であって、形式的にキャリアアップを声高らかに謳う事には違和感がある。引き続きスタッフへのキャリアカウンセリングなどを通じて本質的な支援をしていく。 |
【雇用安定化に対する意見】 |
元来、優秀なスタッフに対しては派遣先などから社員化の引き合いも多く、実質すでに対応してきている。一方で社員を希望しないスタッフやスキル・経験面で正社員化が難しいスタッフへの対応については検討が必要。 |
まだ施行したばかりという事もあり、監督署からの指示が諸々だったり具体性が乏しいケースもあり、明確に何をどこまで対応すべきかが分からないところが不安。 |
安定した雇用の継続が必要とは理解しているが、派遣先へお願いしても理解いただけないケースもあり、キャリアアップや社員化の機会がどの程度提供できるかは不透明。派遣会社のみではなく派遣先などとの連携が必要。 |
自社で社員化する場合、仕事がない期間や、仕事から仕事の間が空くケースで弊社社内で待機して貰う事が想定されるがその間の給与負担や対応、環境整備・確保の負担が不安。 |


今回の法改正では、派遣期間の制限が設けられました。派遣元に無期雇用されている場合や、60歳以上である場合は例外ですが、基本的に個人単位で一つの組織単位(課を想定)で働けるのは、原則3年までとなります。派遣会社は派遣期間終了後のスタッフの雇用安定措置を進めていかなければなりません。それについて行う対策を聞いてみたところ、「新たな派遣先の提供」と答えた企業が62%、「派遣先での直接雇用」が55%と高い数字になりました。これは派遣スタッフの「派遣先の直接雇用社員になれるようサポートしてほしい」という要望と合致しています。また、「安定した雇用の継続が確実に図られる措置」、「まだ決めていない」と答えた企業で今後予測される措置として多かったのは「派遣元での直接雇用」でした。派遣会社で無期雇用される働き方も、一度検討してみると良いのかもしれません。
⇒参考:「派遣元の雇用安定措置」
⇒参考:「派遣先の雇用安定措置」
派遣会社に聞いた!

「安定した雇用の継続が確実に図られる措置」とご回答された方の具体的措置について
派遣元での直接雇用
14名
- ・エリア限定社員
- ・無期雇用
- ・自社での採用等
- ・派遣元での直接パート雇用
- ・無期化を前提とした人事制度へのシフト
派遣先での直接雇用
4名
- ・有料職業紹介での派遣先での直接雇用
- ・紹介予定派遣の積極導入
- ・自社での採用等
- ・有給研修
新しい就業先を支援
7名
- ・教育研修の充実化でスタッフのスキルアップ支援
- ・代替え就業先の紹介
- ・部署転換
- ・派遣先と協力し定期的な人事異動を検討
検討中(先行き不明)
4名
「まだ決めていない」とご回答された方の方向性について
派遣元での直接雇用
14名
- ・無期雇用にすべきかどうか検討中
- ・一部、派遣元での無期雇用を検討する
検討中(先行き不明)
18名
派遣スタッフに聞いた!

派遣スタッフのみんなの声は!?
あわせて読みたい、「派遣法改正後の、自身と周囲の変化について」


派遣スタッフは、正規雇用労働者に比べ、職業能力形成の機会が乏しいという現状を踏まえ、今回の改正法では、派遣スタッフのキャリアアップ支援が初めて義務付けられました。 これまでも派遣会社には教育関連のプログラムがありましたが、より「自社研修を拡充」すると答えた企業が55%、研修委託やeラーニング導入の「外部業者を利用」を検討している割合が22%となりました。「まだ決めていない」と回答した企業の方向性も「自社研修」か「外部業者」を中心に検討されていることがわかりました。 キャリアコンサルティング制度における取り組みについては「定期的な面談の実施」と回答した企業が56%となりました。まだ決めていないと回答した企業の今後の見通しも「自社内の強化(キャリアコンサルティングを行える社員の拡充)」と答えた企業が多く寄せられました。これは多くの派遣スタッフが不満としていた「キャリアについての相談する機会がなかった」をカバーする形となります。このことから、派遣スタッフの期待に応えるべく検討しているのがわかります。
派遣会社に聞いた!

「まだ決めていない」とご回答された方の方向性について
自社研修を拡充する
23名
- ・エリア限定社員
- ・無期雇用
- ・自社での採用等
- ・派遣元での直接パート雇用
- ・無期化を前提とした人事制度へのシフト
外部業者を利用する
23名
- ・有料職業紹介での派遣先での直接雇用
- ・紹介予定派遣の積極導入
- ・自社での採用等
- ・有給研修
外部業者と自社研修を
併用する
15名
- ・教育研修の充実化でスタッフのスキルアップ支援
- ・代替え就業先の紹介
- ・部署転換
- ・派遣先と協力し定期的な人事異動を検討
未定
48名
「まだ決めていない」とご回答された方の方向性について
自社内の強化
キャリアコンサルティングを行える社員の充実化(有資格者の採用など)
23名
- ・キャリアコンサルティング有資格者の雇入れ
- ・専門知識を有する者を準備
- ・自社での採用等
同業他社の動向を
把握し決定
23名
- ・同業他社の研修制度などを調査中
未定
48名
派遣スタッフに聞いた!

派遣スタッフのみんなの声は!?
あわせて読みたい、「派遣法改正後の、自身と周囲の変化について」
教育の拡充は派遣会社にとって大きなコストアップになるので対策には時間がかかりそうね。現在の研修制度に加え、より多くの人が見られるeラーニングの導入を考える企業が多いみたい。そのほかにも有資格者のキャリアカウンセラーの雇い入れなど、派遣スタッフの希望を加味している対策内容に期待が高まるわ!
