2020年から施行 
同一労働同一賃金
「同一労働同一賃金」を
さらに詳しく解説

「同一労働同一賃金」を実現するために、法律が整備されたことや企業に対して義務化されたことがあります。大きく分けると下記の3つになります。詳しく内容を見ていきましょう。

  • 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
  • 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
  • 裁判外紛争解決手続「行政ADR」の規定の整備など

「不合理な待遇差を
なくすための
規定の整備」とは

裁判の際に判断基準となる
「均衡待遇規定」「均等待遇規定」
を統一的に整備

「同一労働同一賃金」は、具体的には「均衡待遇」「均等待遇」が実現されている状態を指します。
同一労働同一賃金の実現に向け、これまでなかった契約社員(有期雇用労働者)に対する「均等待遇規定」が規定され、またパート・アルバイト、契約社員(有期雇用労働者)に対して企業が「均衡待遇規定」を明確化することが義務付けられました。

【改正前 → 改正後】 ○:規定あり △:配慮規定 ×:規定なし ◎:明確化

パート 有期 派遣
均衡待遇規定 ○ → ◎ ○ → ◎ △ → ○
+ 労使協定
均等待遇規定 ○ → ○ × → ○ × → ○
+ 労使協定
ガイドライン × → ○ × → ○ × → ○

均衡待遇とは

「①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情」を考慮して不合理な待遇差を禁止する、つまりバランスのとれた待遇にしなければならないということ。
逆に言えば、条件の違いに応じた不合理のない待遇差については認めるもの。

均等待遇とは

「①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲」が同じ場合に差別的取り扱いを禁止すること。条件が同じであれば、待遇を同じにすることを求めるもの。

①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情 とは

①職務内容
業務の内容
職業上、継続して行う仕事のこと。業務が同じかどうかは、業務の種類(職種:販売職・事務職・製造工・印刷工など)と個々の業務の中の中核的業務で判断
業務に伴う
責任の程度
業務に伴って与えられている権限の範囲。具体的には、単独で契約締結可能な金額の範囲・管理する部下の人数・決裁権限の範囲・業務の生活について求められる役割・ノルマ等への成果への期待度・トラブル発生時や緊急時に求められる対応など
②職務内容・配置の
変更範囲
転勤昇進といった人事異動や役割の変化の有無や範囲など、人事活用の仕組みや運用
③その他の事情 職務の成果や能力・経験・合理的な労使慣行・労使交渉の経緯など

「労働者に対する待遇に関する
説明義務の強化」とは

「正社員との待遇差の内容や理由」についても説明を受けられるように

法改正によって、待遇に関する説明義務が強化され企業は、賃金だけでなく、昇給や手当・賞与・休暇などの待遇面について説明義務ができました。もしそれらの待遇に正規労働者との差異があり、待遇差の内容や理由について労働者から求められた場合には、しっかりと説明しなければなりません。

【改正前 → 改正後】 ○:規定あり △:配慮規定 ×:規定なし ◎:明確化

パート 有期 派遣
待遇内容 ○ → ○ × → ○ ○ → ○
均等待遇規定 ○ → ○ × → ○ ○ → ○
ガイドライン × → ○ × → ○ × → ○
説明を求めた場合の
不利益取扱いを禁止

※賃金、福利厚生、教育訓練など

労働者が説明を受けられるタイミング

「雇い入れ時」もしくは「派遣時(派遣社員のみ)」、「労働者から求めがあった場合」とされています。労働者への説明は、資料を活用しながら口頭で行うのが原則ですが、説明すべき内容をわかりやすくすべて記載した文書を渡すことで差支えないとされています。いずれの場合も労働者が理解できる説明でなければいけません。

不利益な取り扱いの禁止

説明を求めたことを理由とする不利益な取り扱いの禁止は、かつては指針に記載されていましたが、改正により法律に格上げされました。

企業が説明すべき事項を細かく規定

企業が労働者に説明すべき事項は「改正労働者派遣法」「パートタイム・有期雇用労働法」のそれぞれで項目が細かく規定されています。法律の条文に加えて以下を参考にするとよいでしょう。

【パートタイム・有期雇用労働法】

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(厚生労働省HP)

【改正労働者派遣法】

派遣で働く皆さまへ(厚生労働省HP)

派遣元の皆さまへ(厚生労働省HP)

派遣先の皆さまへ(厚生労働省HP)

裁判外紛争解決手続
「行政ADR」の
「規定の整備」とは

「行政ADR」とは?

ADRとは「裁判外紛争解決手続」のことで、裁判によらず公正中立な第三者が当事者間に入り、話し合いを通じて解決を図る手続です。このうち「行政ADR」は、都道府県労働局長による紛争解決援助や均衡待遇調停会議による調停が受けられるものです。
これにより事業主と労働者との間の紛争について、裁判をせずに解決を目指すことができます。

労働者の法的アクションをサポート

不合理な待遇差がある場合、派遣社員やパート・アルバイト、契約社員(有期雇用労働者)が訴訟を起こして損害賠償請求などを行うことはかなりの負担になります。今回の法改正により、『行政ADR』の規定が整備さたことで、派遣社員やパート・アルバイト、契約社員(有期雇用労働者)が救済を受けやすくなりました。

【改正前 → 改正後】 ○:規定あり △:配慮規定 ×:規定なし ◎:明確化

パート 有期 派遣
行政による助言・
指導等
○ → ○ × → ○ ○ → ○
行政ADR △ → ○ × → ○ × → ○

派遣社員の場合

改正前の法律では派遣元および派遣先の双方に対して行政による助言・指導などの規定はあったものの、行政ADRの規定が設けられていませんでした。改正派遣法では行政ADRが利用可能になりました。

パートで働く人・期間契約社員の場合

パートで働く人に加えて、期間契約社員についても、行政指導の規定や労働局長による紛争解決援助、協定会議に調停といったADRの手続きの制度が整備されました。また均衡待遇や正社員との待遇差の内容や理由に関する事例についてもADRの利用が可能になりました。
裁判になっても安心

■給食手当に関する判例(ハマキョウレックス事件:最高裁 2018年6月1日判決)

この企業における給食手当の支給目的は、従業員の食事に係る補助とされています。正社員には支給し、契約社員には支給していませんでした。

⇒不合理と判断

勤務時間中に食事をとる必要がある労働者に対して支給されるもので、正社員と契約社員の職務内容が同じである上、職務内容・配置の変更範囲の相違と勤務時間中に食事を取る必要性には関係がないことが判決の理由となっています。

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