
私もいつか はたらこねっとを使う1人に|磯村美嘉さん|はたらこpeople
「仕事と家庭のバランス、本当に両立できるのだろうか?」「同じ会社で長く働き続けていていいのだろうか?」そんな悩みを抱えながら働く人も多いはず。
dip株式会社のHR事業部長として働く國府昇平(こくぶ しょうへい)さんは、「変化を楽しむ」ことでキャリアと家庭を両立させてきました。
子育てと仕事を両立する中で進化させた働き方について、お話を伺います。
――まずはキャリアを教えてください。
國府:入社当初は、派遣会社のような人材を扱う会社を支援する、アウトソーシング(OS)事業本部に配属されました。
現在は、同じく人材会社を担当するHR事業部で、事業責任者を務めています。
新卒から同じ領域で、部署の形が変わりつつも18年が経ちました。
現在の主な業務は、営業担当の指導や育成、マネジメントが中心ですが、クライアントとの関係構築にも力を入れています。
――18年間、同じ部署で働き続けられるモチベーションは、どこにあると感じますか?
國府:「変化を楽しむ」ことを大切にしています。同じ部署に18年もいると単調に思えるかもしれませんが、実際は業務の内容が常に変化を続けているため、小さな変化を積み重ねて楽しめたことが大きいですね。
また、同じ業務内容でも、変化をつけて面白くしていくことを意識してきました。
例えば、新卒の頃にテレアポを行ったときのこと。最初は苦手でしたが、「やるからには 楽しもう」と、コールごとに声のトーンや話し方を変えてみたんです。
すると、相手の反応も変わり始め、次第にお客様との会話が面白くなっていきました。捉え方ひとつで仕事の面白さはいくらでも変えられる、そう実感した出来事です。
仕事と家庭も同じです。独身時代は営業に打ち込んでいましたが、子どもが生まれてからは働き方を変え、週に2回は午後5時半に退社し、子どものお迎えを担当。
働き方が大きく変化しましたが、その変化も楽しんでいます。
――これまでのキャリアのなかで、「楽しい」ことだけではなく「困難」もあったと思います。
國府:もちろんありました。新卒2〜3年目のリーマンショックの時、人材のニーズが激減して、自分の仕事の意義を見失いそうになったことがあります。
求人を出す企業がほとんどないなか、「他に困っていることはありませんか?」とクライアントに聞くようにしたところ、「仕事がない」「家賃が払えない」「資金繰りが厳しい」といった切実な悩みが、次々と出てきました。
その時、もっと幅広く経営や事業の課題に応えられるようにならなければと強く思い、「採用の予定はありますか?」という問いかけを「今、どんなことにお困りですか?」へ変えてみたんです。
例えば、ある派遣会社から「仕事がない」という相談を受けたことがあって。それと同時期に「応募があっても面接に来てくれない」という課題をお持ちの企業もありました。
そこで私は派遣会社に、応募対応に課題を持つ企業に対してすぐに対応できるスタッフを派遣することを提案。その結果、派遣会社は人を派遣できる仕事が増え、企業は応募対応の課題を解決することができ、双方にとってメリットが生まれたのです。
求人は増えず大変な時期でしたが、クライアントとの強い信頼関係を築くことができました。リーマンショックが落ち着いたころに「あの時助けてもらったから掲載するよ」というお声がけがあった時は、本当に嬉しかったですね。
また、これと同時期に、中高の同級生が同業界で活躍しているのを見て焦りを感じたこともありました。いつも通り会って、会話をするなかで、自分の知らない専門用語や業界の話題がたくさん出てきたんです。
リーマンショックの影響で顧客が減り、自分の仕事の意義を見失いそうになっている自分と、彼らの活躍しているエピソードを比較してしまい、「このままでは置いていかれる」という焦燥感と、「もっと勉強しなきゃ」と強い危機感を持ちましたね。
でも、その気持ちをバネにして、ビジネス書を読んだり、セミナーにも積極的に参加したりとスキルを磨く努力をしたんです。その結果、クライアントの経営に直接関わるような「採用」以外の悩みを解決できるようになり、自身の営業としての幅が広がりました。
また、大きなクレームや失敗があっても、「どうすれば解決できるか」と逃げずに向き合うという、マインドの変化も大きかったなと思います。
――子育てにも積極的に参加しているとお伺いしました。仕事も忙しいと思いますが、どこかに転換期があったのでしょうか?
國府:はい。かつては「いつでも、どこでも行きます」という働き方をしていましたが、子どもができたタイミングで、送り迎えという物理的な制約に直面。これまでの働き方では生活が成り立たないと感じ、量で仕事するのをやめました(笑)。
これまでは毎回、クライアントの理解のために1からメンバーの相談を聞くことが多かったのですが、メンバーと同じ目線に立つため、まずはクライアントへの同行を徹底するように努めました。そうすることで今後は、毎回1から説明してもらわずとも、社内での相談対応や意思決定をスムーズに行えるだろうと思ったからです。
また、メンバーからの「同行してください」という要望をすべて受けるのも難しいので、まずは商談前にある程度の方針を決めてもらい、朝イチで決裁を取りに来てもらうなど、業務の前倒しも徹底。
その影響で、以前はメンバーが帰社した夕方から受けることが多かった相談ごとのキャッチアップも、日中にできるようになりました。このときは、周りに頼ることをポジティブに捉えるように意識しましたね。
最初は大変でしたが、結果として自然と一人ひとりが主体性を持つようになり、視座も高まったと思います。
――仕事への考え方を変えて、子育てにも向き合う。ワークライフバランスが取れている状況ですね。
國府:そうですね。私にとって、ワークとライフはどちらも、目の前の変化を楽しめるかが大切だと思っています。
例えば私は最近、子育てを通して料理の楽しさに気づきました。子どもに「美味しい」と言ってもらえることを目標に、夕飯の献立を考えることが楽しみで。自分がやったことによって、周囲への影響や変化があると感じられる瞬間があるのは嬉しいものです。これは、仕事でも同じですね。
今後、子どもにもいろいろな変化があると思います。仕事でも部署やポジションが変わるかもしれませんし、それに合わせて私自身の働き方は変わっていくでしょう。
働き方を見直した今でも、妻と協力しながら試行錯誤を重ねる日々です。これからも目の前の一つひとつの変化にちゃんと向き合いながら、前向きに捉えて楽しむ、ということを大切にしていきたいですね。
――最後に、これまでの経験から得た実践的なアドバイス、役立つ考え方があれば教えてください。
國府:アドバイスになるかわかりませんが、「相手の話をちゃんと聞く」のは大事だと思います。
自分の力をつけるのも必要ですが、家では妻や子ども、職場では同僚や部下…常に相手がいて、それぞれ求められていること全てには応えきれないかもしれません。体は1つしかないので(笑)。
その時に解決はできなくても、話を聞くこと、相手の気持ちを理解しようとすることはできます。今できる、1つひとつのことに向き合うことが、結果として自分の充実感を高めていく、これは働いてきて立場が変化したことや、家庭のなかで気づいたことです。
また、仕事でも家庭でも、「やらされている」より「自分からやっている」方が面白いから、楽しいと思えるほうがいいですよね。
ただ、マネジメントをしているなかで、「楽しい」の基準を「ラク=楽しい」というように、はき違えてしまっている人も少なくありません。
本当の楽しさとは、自分の充実感が高まる状態だと、私は思っています。
忙しさからどうしても楽しめない時には気持ちをリセットして、改めて「今の環境でできること」に目を向けるようにしていますが、そうした小さな行動だけでも意外と気持ちが軽くなるもの。自分が何で充実感を得るのか、しっかり捉えることが大事ではないか、ということも伝えたいです。
國府 昇平
ディップ株式会社 メディア事業本部 HR事業部 事業部長
2007年にディップ株式会社へ入社。HR事業部にて、人材サービス企業の採用支援を行う営業職としてキャリアをスタート。その後、課長職、部長職を歴任し、2022年にはHRコンサルティング事業部の事業部長も経験。2023年より現職。