パートでも社会保険は加入必須?加入条件とメリット・デメリットを詳しく解説【社労士監修】
「103万の壁」とは?超えたら手取りはどうなる?税金や扶養控除について解説【税理士監修】
最近話題の「103万の壁」ですが、パートやアルバイトで働く人の中には、この壁を意識して仕事選びやシフトの調整をしている人も多いのではないでしょうか?
この記事では、103万の壁とは何なのか、超えてしまったらどのような影響がでるのかについて紹介していきます。
103万の壁ってなに?
「103万の壁」とは、給料をもらって働く人の年収が103万円を超えたとき、税金などの負担が増えて手取りや家計に影響が出る、年収のボーダーラインです。
このような「年収の壁」には大きく分けて3つの種類があります。
- 税金がかかるようになる壁
所得税や住民税を納税しなくてはいけなくなる年収のボーダーラインです。
- 社会保険に加入しなければならない壁
自分で社会保険に加入し、健康保険料や年金の支払いを始めるボーダーラインです。
- 扶養者の控除額に関わる壁
家族を養っている人の控除の金額の減額や、控除を受けられなくなるボーダーラインです。
家族や配偶者を養っている人は、課税の対象となる所得を減らし、税金の負担を軽くすることができる「控除」という制度を利用しています。
「103万の壁」を超えるとどのような影響があるのか、詳しく見ていきましょう。
所得税を支払うようになる
■ 所得税が発生する103万の壁
年収が103万円を超えると、その超えた分に対して「所得税」という税金を支払うことになります。
103万円までは、基礎控除(最高48万円)+給与所得控除(最低55万円)という控除があり、課税の対象になりません。
パートやアルバイトの給料は、ほとんどの場合、所得税が自動的に引かれています。
これを「源泉徴収」といいます。
源泉徴収されたお金は、年末に「年末調整」という手続きを勤務先で行うことで、過不足を調整します。
払いすぎた分は、年末調整で返ってくる仕組みになっています。
配偶者の控除や手当に影響する
結婚していて、配偶者があなたを扶養している場合、あなたの給与収入が年間103万円を超えると、配偶者の手取りが減る可能性があります。
影響があるのは「扶養手当(配偶者手当)」「配偶者控除」の2つです。
▼ 扶養手当(配偶者手当)
会社によっては、扶養手当(配偶者手当)を支給しているところもあります。
この手当の条件が「配偶者の年収が103万円以下」となっている場合が多いため、収入が103万円を超えると手当がもらえなくなることがあるので注意が必要です。
▼ 配偶者控除
あなたの給与収入が年間103万円以下の場合、「配偶者控除」の対象になります。
この控除によって、配偶者は控除を受けることができ、税金の負担を軽くすることができます。
もし103万円を超えてしまうと、この「配偶者控除」を受けられません。
ですが、代わりに「配偶者特別控除」という控除の対象となり、年収150万円までなら同等の控除を利用することができるので、控除額が大きく減るわけではありません。
親の扶養から外れ、親の税金が増える
あなたが親の扶養内でアルバイトなどをしている場合、あなたの給与収入が年間103万円を超えると、親の手取りが減る可能性があります。
影響があるのは「扶養控除(特定扶養控除)」です。
▼ 扶養控除(特定扶養控除)
あなたが16歳以上で、給与収入が年間103万円以下の場合、あなたを扶養する親は「扶養控除(特定扶養控除)」の対象になります。
これによって、親は控除を受けることができ、税金の負担を軽くすることができます。
あなたがバイトなどで稼いだお金が103万円を超えると、親が扶養控除を受けられなくなります。
その結果、親が支払う税金が増える可能性があります。
学生の場合、勤労学生控除によって住民税や所得税は103万円を超えてもかかりません。
ただし、親の扶養から外れると家計全体の手取りはマイナスになることがあるので注意が必要です。
あなたがどれくらい働くか、どれくらい稼ぐかは、親や家族と相談して決めるのが大切です。
103万の壁の対象となる収入
103万円は年収の壁の一つですが、年収といっても、何が含まれて、何が含まれないのか分からないという人も多いのではないでしょうか?
ここでは、103万円の壁の対象となる収入について解説します。
その年の1~12月の給与収入
「103万の壁」の対象になる収入は、その年の1月1日から12月31日までに支払われた金額が対象です。
たとえば、12月に働いた分の給料が翌年1月に支払われる場合、それは「翌年の収入」として扱われます。
給料としての収入以外に、YouTubeやアフィリエイトからの収入がある場合、経費を差し引いた利益と給与所得(=給与収入-給与所得控除)が48万円を超えると所得税がかかることがあります。
これらの収入は給与所得控除の対象にならないため、収益を計算するときは注意が必要です。
交通費は含まない
103万円に含まれるのは、基本的に「給料」や「手当」です。
通勤のためにもらう交通費や通勤手当は、原則として103万円の対象には含まれません。
ただし、以下のような一部の交通費は課税対象になることがあります。
- 1ヵ月あたりの交通費が15万円を超える場合(交通機関を利用している場合)
- 車や自転車を使っていて、通勤距離に応じた非課税限度額を超える場合
103万円を超えたら所得税と住民税はいくら?
ここでは、103万円を超えたときの税金の負担について解説します。
所得税
所得税は、年収から「基礎控除(最高48万円)」と「給与所得控除(最低55万円)」を引いた課税所得に対してかかる税金です。
この合計が103万円になるため、年収が103万円を超えた部分に税金がかかります。
税率は、課税所得が1,949,000円までは5%で計算されます。
例:年収105万円の場合
課税所得 = 105万円 - 103万円 = 2万円
所得税 = 2万円 × 5% = 1,000円
参照:国税庁「所得税の税率」
住民税
住民税は、基本的に年収が100万円を超えると課税される税金です。
所得税とは違い、住民税は地域(自治体)ごとに異なるため、住んでいる場所によって金額が変わることがあります。
住民税は「均等割」と「所得割」の2種類が組み合わさって計算されます。
- 均等割:一律で課税される金額(地域によって異なるが、標準額は5,000円)
- 所得割:超過分に対して10%(地域による変動あり)
例:年収105万円の場合
課税所得を計算
年収105万円 - 100万円 = 5万円
所得割を計算
5万円 × 10% = 5,000円
均等割を加算
5,000円(均等割) + 5,000円(所得割) = 10,000円
参照:総務省「地方税制度|個人住民税」
学生の場合の特例
もしもあなたが学生であれば「勤労学生控除」の対象となり、以下の金額までは税金がかかりません。
- 住民税:124万円以下
- 所得税:130万円以下
その他の年収の壁
103万の壁以外にも、パートやアルバイトで働く人には「100万」「106万」「130万」「150万」「201万」といった年収の壁があります。
年収によって自分や家族にどのような影響があるのかを、しっかり把握しておきましょう。
■ 年収の壁
100万の壁:住民税が発生
100万円の壁は、住民税の課税と非課税を分けるボーダーラインです。
給与収入が100万円を超えた場合、超えた部分に対して住民税がかかるようになります。
ただし、自治体によってこの基準は93万~100万円と若干異なるため、居住地の市区町村などで確認が必要です。
106万・130万の壁:扶養を外れて社会保険に加入
年収106万円と130万円の壁は、自身で社会保険に加入するかどうかのボーダーラインです。
年収が上がると、扶養家族として家族の社会保険に入っていた人も自分で社会保険に加入しなければいけません。
社会保険料を負担することになるため、手取りが減ってしまいます。
ただし、保険料を支払うことで医療保障が手厚くなったり、将来の年金額が増えるといったメリットもあります。
106万円を超える場合、一定の条件を満たしていれば、社会保険への加入が必要となり、130万円を超えると、すべての人が社会保険に加入することになります。
参考:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
150万の壁:配偶者特別控除が段階的に減額
150万円の壁は、配偶者特別控除の控除額が減り始めるボーダーラインです。
給与収入150万円までは、配偶者特別控除の最大額38万円が適用になります。
しかし、150万円を超えると、この控除額が段階的に減っていきます。
控除額が減ることで、扶養する側の税負担が徐々に増加します。
参照:国税庁「配偶者特別控除」
201万の壁:配偶者特別控除が受けられない
201万円の壁は、配偶者特別控除が適用外になるボーダーラインです。
厳密には201.6万円未満で、ほかに所得がない人が、配偶者特別控除を受けることができます。
扶養される配偶者の年収が増えると、配偶者特別控除の対象ではなくなるため、扶養する側の控除がなくなり、結果として税負担が増えることになります。
参照:国税庁「パート収入はいくらまで所得税がかからないか」
まとめ
この記事では、最近話題の「103万の壁」について紹介しました。
- 所得税、配偶者や親の扶養や手当に関係する収入のボーダーライン
- その年の1月から12月までに支払われた給与の合計額が対象
- 通勤手当や交通費は原則含まれない
「税金がかかるタイミング」や「扶養控除への影響」をしっかり理解しておくことで、手取りがマイナスになることを防ぐことができます。
さらに、家族にも影響が出る場合があるため、家族と相談しながら自分の働き方や収入目標を決めましょう。
増田 浩美 増田浩美税理士事務所所長
女性ならではのきめ細やかな視点を強みに、企業から個人まで幅広い税務のサポートを行う。 ホームページ:http://www.zeimukaikei.jp/