
医療費控除はいくらから?会社員でも確定申告は必要?申告方法について紹介【税理士監修】
確定申告とは、1年間の所得を計算し、税金を納めたり、払いすぎた税金を返してもらったりするための手続きです。
確定申告は、原則3月15日までに行わなくてはいけませんが、「確定申告をしないとどうなるの?」そんな疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、確定申告をしなかったときのペナルティやデメリット、期限後の対処法について、分かりやすく解説します。
また、申告内容に誤りがあった場合の対応や確定申告が必要な人についても紹介します。
「確定申告は面倒そうだし、やりたくないな」と思うかもしれません。
しかし、確定申告をしないと、思わぬペナルティやデメリットを受ける可能性があります。
ここでは、確定申告をしないことで発生するペナルティやリスクを分かりやすく説明します。
確定申告をしなかった場合、次のようなペナルティが発生することがあります。
期限を過ぎてから申告したときにかかる税金
税金の支払いが遅れると、遅れた日数分だけ増えていく税金
意図的に税金を隠した場合に課される厳しい税金
どれも税金を多く支払わなければならなくなるため、確定申告をしっかりして避けることが大切です。
以下で、それぞれのペナルティについて詳しく解説します。
無申告加算税は、確定申告を期限内にしなかった場合にかかる税金のことです。
確定申告の期限を過ぎてしまうと、通常よりも多くの税金を支払わなければならなくなります。
要件 | 課税の割合 | ||
---|---|---|---|
50万円まで | 50万円超 | 300万円超 | |
調査の事前通知前に | 5% | ||
調査の事前通知後に申告 | 10% | 15% | 25% |
税務署の調査後に申告 | 15% | 20% | 30% |
ただし、税務署から指摘される前に自分から申告すれば、税率が低くなるため、できるだけ早く申告することが大切です。
また、申告期限から1カ月以内に自主的に申告し、期限内申告をする意思があったと認められる場合には、無申告加算税はかかりません。
「無申告加算税が免除されるケース」にて紹介します。
参照:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」
重加算税は、意図的に税金をごまかしたり、売上を隠したりした場合に課される重い税金です。
「知らなかった」「うっかり忘れた」ではなく、わざと隠したと判断されると適用されます。
要件 | 税率 |
---|---|
申告したが、税額を少なく見せていた場合 | 35% |
申告書を提出しなかった場合 | 40% |
たとえば、税金100万円を支払うはずだった人が、わざと50万円と申告した場合、本来の100万円に加えて、35万円の罰則が追加されることになります。
また、過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合、さらに10%加算されます。
税金をごまかそうとすると、最終的に大きな損をすることになるので、正しく申告することが大切です。
参照:財務省「加算税の概要」
延滞税は、税金を期限までに支払わなかった場合に発生する税金です。
確定申告をしなかったことで、支払うべき税金の支払いが遅れることになると、無申告加算税とあわせて、この延滞税が発生します。
延滞税は、支払うべき税金の納付が遅れるほど負担が大きくなる仕組みになっています。
税率が年度によって変わるのが特徴で、2025年の延滞税の税率は以下の表のとおりです。
要件 | 税率 |
---|---|
納付期限の翌日から2カ月以内 | 2.4% |
納付期限の翌日から2カ月を経過した日の翌日以後 | 8.7% |
たとえば、確定申告をしておらず、支払うべき税金が100万円だった場合、本来の100万円と重加算税の35万円、さらに延滞期間に応じた延滞税を支払うことになります。
延滞税は、納付が遅れるほど税金が増えるので、早めに支払うことが大切です。
参照:国税庁「No.9205 延滞税について」「延滞税の割合」
確定申告をしないと、税金を追加で請求される以外にも様々なデメリットがあります。
源泉徴収などで払いすぎた税金がもどってきません。
確定申告でしか適用できない医療費控除・住宅ローン控除などの所得控除が受けられず、結果的に税金の負担が増えてしまいます。
決められた期限内に申告することが条件の、青色申告控除(最大65万円)を適用することができません。
確定申告をしていないと、フリーランスや個人事業主は収入証明ができず、家を借りるときや保育園の入園手続きの際に困ったり、住宅ローンを組む際の審査に通りにくくなったりすることがあります。
国民健康保険の保険料は前年の所得に基づいて計算されるため、申告しなかったことで適用されるはずの軽減措置が受けられなくなることがあります。
「確定申告をしなくても、税務署にはバレないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、税務署はさまざまな方法で収入を把握できます。
たとえば、企業が税務署に提出する「支払調書」には、個人に支払った報酬の記録が残ります。また、銀行口座の大きな入金や不動産の購入履歴などから、収入が把握されることもあります。
税務署は定期的に税務調査を行っており、脱税を疑われていなくても、どこかから発覚する可能性があります。
確定申告をしなかったことで、バレた後に本来支払うよりも多くの税金を支払うことになるかもしれません。
バレなければいいと慢心せずに、しっかりと期限までに確定申告をするようにしましょう。
「確定申告の期限を過ぎてしまった! もう間に合わないのでは?」と不安に思うかもしれません。
しかし、期限を過ぎたとしても、申告することは可能です。気が付いたらすぐに申告するようにしましょう。
ここでは、期限後に申告する場合の影響や、無申告加算税が免除されるケースについて解説します。
確定申告の期限が過ぎてしまっても、申告自体はできます。税務署では「期限後申告」として受け付けています。
しかし、期限内に申告する場合と違い、下記のペナルティとデメリットがあることを覚えておきましょう。
期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く申告することで、ペナルティを最小限に抑えることができます。
期限後に申告すると、多くの場合「無申告加算税」がかかりますが、特定の条件を満たせば、この税金が免除されることがあります。
無申告加算税が免除されるには、次の3つの条件をすべて満たす必要があります。
つまり、以前に同じようなミスをしていない人が「たまたま忘れてしまったが、すぐに対応した」という場合には、税務署が「悪意のないミス」と判断し、ペナルティを免除するというものです。
「1カ月の猶予があるからまだいいか」とならず、気が付いたらすぐに対応することが大切です。
期限内に確定申告はできたけど、申告した内容に誤りがあることもあります。
ここでは、自分で間違いに気づいたケースと、税務署が気づいて指摘をされるケースについて解説します。
確定申告をした後に、「計算ミスで本来よりも税額を少なく申告していた」「控除を適用し忘れていた」と間違いに気がつくことがあります。
このように、自分で間違いに気が付いた場合、実際の税額より多く申告していたときは「更生の請求」を、実際の税額より少なく申告していたときは「修正申告」を行うことで、間違いを訂正できます。
①「更生の請求書」を作成する
国税庁のホームページや税務署の窓口でダウンロード・入手できる、「更生の請求書」という専用の書類を作成します。
②更生の請求書を税務署に提出する
更正の請求書や添付書類を、確定申告を行った税務署へ提出します。
「税務署の窓口へ直接提出」と「郵送」、「e-Taxによる電子申請」の3種類いずれかの方法で行いましょう。
③税務署の審査を待つ
税務署が「更正の請求は適切か」「申告額は間違っていないか」などを審査します。審査終了後に更正が認められれば還付金が振り込まれ、認められなければ「更正すべき理由がない旨の通知書」が届きます。
①誤りに気づいたら、すぐに税務署へ相談する
税務署に直接相談すれば、修正申告の方法について詳しく教えてもらえます。
②修正申告書を作成する
確定申告書と同じ形式で、修正した内容を記入した「修正申告書」を作成します。これは、税務署の窓口やe-Taxというオンライン申告システムを利用して提出できます。
③追加で納めるべき税金がある場合は、速やかに納付する
間違いによって税額が少なくなっていた場合は、不足分の税金をすぐに納める必要があります。早めに支払うことで、延滞税を抑えることができます。
もし税務署から指摘を受けて「本来よりも少なく税金を申告していた」とわかった場合は、「自主申告」を行う必要があります。
①税務署から通知を受け取る
税務署から「申告漏れがあります」という通知が届きます。この時点で、すでに税務署は収入を把握しているため、無申告のまま放置するとさらに重い罰則が課される可能性があります。
②申告漏れの内容を確認し、修正申告書を作成する
税務署の指示に従い、修正申告書を作成します。
③延滞税や加算税の通知を受け取ったら、速やかに納付する
自主申告の場合、無申告加算税や延滞税が課されるため、通知を受け取ったらすぐに対応し、納めるべき税金を支払います。
確定申告は、自営業の人やフリーランスが行うものだと思われがちですが、会社員やアルバイト、年金を受け取っている人でも必要になる場合があります。
「自分は関係ない」と思っていても、一定の条件に当てはまると確定申告が必要になります。
ここでは、確定申告が必要な人の条件を詳しく見ていきましょう。
フリーランスや個人事業主として働いている人は、基本的に1年間の所得(収入から経費などを引いた金額)が48万円を超えると確定申告が必要になります。
また、以下のような場合にも申告が必要になります。
フリーランスや個人事業主の人は、「青色申告」という方法を選ぶことで、最大65万円の控除を受けられます。また、所得が48万円以下の場合でも、青色申告することで損失を繰り越すことができます。
ただし、これを利用するためには、期限内にちゃんと確定申告をしなければなりません。
事業の前々年の売上が年間1,000万円を超えると、所得税だけでなく消費税の申告・納付も必要になります。
また、年間1,000万円を超えない場合でも、インボイス発行事業者は消費税を納める義務が発生します。
会社員やアルバイトの場合、ほとんどの人は勤務先が「年末調整」という手続きをしてくれるため、自分で確定申告をする必要はありません。
しかし、以下のような場合には、給与所得者(会社員・パート・アルバイトなど)でも確定申告が必要になります。
年金を受け取っている人は、以下のような場合に申告が必要になります。
年金の受給額が400万円を超えると、確定申告が必要になります。
たとえば、年金のほかに副業収入や不動産収入がある場合、合計で20万円を超えると確定申告をしなければなりません。
不動産を持っていて、そこから収入を得ている人も確定申告が必要になることがあります。
マンションやアパートを貸している場合、家賃収入が発生します。この収入に対して税金がかかるため、確定申告が必要になります。
不動産を売って利益が出た場合(譲渡所得)、税金を納めなければなりません。
投資で利益が出た場合も、確定申告が必要になることがあります。
株やFX、仮想通貨(ビットコインなど)での利益が20万円を超える場合、収入として確定申告が必要になります。
※「源泉徴収あり」の特定口座で取引している場合は、確定申告は不要です。
投資で損をした場合でも、確定申告をしておくと、翌年以降の利益と相殺できる制度があります。
一時所得とは、「普段の仕事の収入とは別に、一時的に得たお金」のことです。
この一時所得が年間50万円を超えた場合、確定申告が必要になります。
たとえば、次のようなものが一時所得にあたります。
A.災害のようなやむを得ない事情がある場合は、申告期限を延長できる可能性があります。
申告期限の延長が認められるのは、次のようなケースです。
このような場合、災害等のやんだ日から相当の期間内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を税務署長に提出することで、申告、納付等の期限を延長することができます。
ただしすべてのケースで認められるわけではなく、税務署の判断によるため、できるだけ早く相談することが大切です。
参照:国税庁「C1-16 申告期限の延長の申請」
A. 税務署は過去の収入も調査することができ、最長で5年分までさかのぼって確認することができます。
もし「意図的に税金を申告しなかった」と判断された場合は、「重加算税」という厳しいペナルティが課されることがあります。
「確定申告が必要だったのに、していなかった」と気づいたら、できるだけ早く自主的に申告するようにしましょう。
早めに対応すれば、税務署からの指摘を受ける前に手続きできるため、ペナルティを軽減できる可能性があります。
この記事では、主に「確定申告をしないとどうなるのか」について紹介してきました。
確定申告をしないと、追加の税金がかかるだけでなく、さまざまな不利益を受ける可能性があります。
しかし、「忘れていた!」と気づいてすぐに対応すればペナルティを軽減できることもあります。
自分が確定申告をする必要があるか早めに確認し、確定申告は期限内に余裕をもって対応しましょう!
増田 浩美 増田浩美税理士事務所所長
女性ならではのきめ細やかな視点を強みに、企業から個人まで幅広い税務のサポートを行う。 ホームページ:http://www.zeimukaikei.jp/