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アルバイト・パートでも確定申告は必要?必要になるケース、申告方法について解説【税理士監修】
アルバイトやパートの人は、勤務先で年末調整を行うことが多いので、「確定申告は自分には関係ない」と思っている人も多いのではないでしょうか?
実はアルバイトやパートでも、確定申告が必要なケースがあります。
この記事では、確定申告や年末調整について説明しつつ、アルバイトやパートでも確定申告が必要になるケース、よくある質問などを紹介します。
確定申告とは
「確定申告」とは、1年間のアルバイトなどの収入をまとめて、納める税金を計算して税務署に報告する手続きのことです。
まずは、税金を計算するためのベースになる「課税所得」を計算します。
税金は、稼いだ収入すべてではなく、そのうち対象になる課税所得にのみかかります。
■ 課税対象になる所得の計算方法
課税所得とは、収入から経費や控除を引いた残りの金額のことです。
会社員やバイトの給与、フリーランスの売上などからそれらを引いて計算します。
控除は、課税の対象になる所得を計算するために、一定の金額を差し引くことです。
たとえば、以下のような控除があります。
- 基礎控除
生きるための最低限必要な収入に課税しないために差し引かれる
- 給与所得控除
給与所得者が仕事上に必要不可欠な出費分を計算することは非常に煩雑であり、現実的ではないため年収に応じて一律差し引かれる
- 勤労学生控除
学生に対して課税する金額を少なくするために差し引かれる
控除を適用することで、課税の対象額が減り、最終的な税金の負担が減ります。
アルバイトで確定申告が必要な人
アルバイトやパートをしている人は、たいていの場合、働いている会社が税金を計算してくれる「年末調整」で手続きが終わります。
しかし、以下のケースに当てはまる人は、アルバイトやパートでも自分で確定申告をする必要があります。
12月31日までにアルバイトを辞めた人
会社が行う年末調整は、12月31日時点で働いている人が対象です。
そのため、年末までにアルバイトを辞めてしまった場合には、会社で年末調整をしてもらえません。この場合、自分で確定申告をする必要があります。
年末までに新しいバイトを始めている場合、新しいバイト先で年末調整をしてもらえます。
以前のバイト先から「源泉徴収票」を受け取り、新しいバイト先に提出しましょう。
複数のアルバイトを掛け持ちしている人
年末調整は1つのバイト先でしか行われません。
複数のバイト先から給与をもらっている場合、年末調整されなかった給与の収入金額と給与所得、および退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える人は、確定申告を行う必要があります。
給与以外に20万円以上の所得がある人
バイトの給与以外に20万円以上の所得がある場合も、確定申告が必要です。
例えば、UberEats、アフィリエイト、SNSなどの報酬や収益が対象です。
年末調整で対応できない控除を受けたい人
年末調整では、医療費控除などの控除は年末調整では適用されません。
下記の控除を受けたい場合には、確定申告が必要です。
医療費控除
1年間に支払った医療費が一定額を超える場合に受けられる控除です。
寄附金控除
寄附金控除は、特定の寄附(ふるさと納税など)を行った場合に受けられる控除です。
ただし、本来確定申告が不要な人で、ふるさと納税した自治体が5つ以下であれば、ワンストップ特例制度を利用することで確定申告が不要となります。
住宅ローン控除
住宅を購入した場合、住宅ローンの残高に応じて受けられる控除です。
初年度のみ確定申告が必要で、その後の年は年末調整で適用されます。
雑損控除
災害や盗難などで損害を受けた場合に受けられる控除です。
参照:国税庁「所得控除のあらまし」
アルバイト先で年末調整をしてもらえない人
基本的に年末調整は、勤務先の義務です。
しかし、提出期限までに、年末調整に必要な書類を揃えられななかったなどの理由により、年末調整をしてもらえないケースでは、年収が103万円を超す人は自分で確定申告をする必要があります。
年収103万円以下の場合には、確定申告は任意となりますが、源泉徴収されている場合は、申告をすれば払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります。
くわしくは「年収が103万円以下なら確定申告は必要ない?」のセクションで紹介します。
アルバイトの確定申告のやり方
確定申告は、「確定申告書」という書類を作成し、申告する年の翌年2月16日~3月15日に税務署へ提出します。
最近では、電子申告(e-Tax)を利用してパソコンやスマホからも申告できるようになりました。
ここでは、確定申告の流れと必要なものについて紹介します。
確定申告の流れ
ステップ1:必要書類を準備
源泉徴収票、各控除証明書(社会保険料、医療費控除など)、マイナンバーなど必要書類は全て事前に揃えておくと、申告書の作成がスムーズです。
ステップ2:確定申告書を作成
確定申告書は、e-Taxでオンライン作成する方法か、税務署でもらえる申告書の用紙に、手書きで記入する方法から選ぶことができます。
確定申告書は、収入額や控除額を入力していき、納税額を計算する書類です。
e-Taxを使うと控除額や税額の計算を自動で行ってくれるので、オンラインでの申告がおすすめです。
ステップ3:申告書を提出
e-Taxでの電子申告、もしくは税務署に持参、郵送で提出します。
提出期間は、2月16日~3月15日です。
※3月15日が土・日・祝日に該当する場合は、翌平日までです。
※還付申告については、2月15日以前でも行えます。
確定申告に必要もの
- 確定申告書
確定申告書は、申請する者の氏名や住所、マイナンバーなどの基本情報と、1年間の所得や控除額を記入する用紙です。
■ 確定申告書の見本
参照:国税庁「申告書第一表・第二表【令和5年分以降用】(PDF/767KB)」
- 控除証明書
生命保険などの保険料の控除を適用する場合に、控除額の証明になる書類です。
- 源泉徴収票
給与所得者の場合は、アルバイト先から発行される源泉徴収票が必要です。
アルバイト先に源泉徴収票が必要であることを、事前に伝えておきましょう。
- 銀行口座の情報
還付金がある場合は、振込先になる銀行口座の情報が必要になります。
通帳やキャッシュカードを準備しておくとスムーズです。
- マイナンバーカード
マイナンバーカードがあると、e-Tax(電子申告)の「マイナンバーカード方式」という確定申告ができます。これは、パソコンやマイナンバーカードを読み取れるスマートフォンから、簡単に申告できる方式です。
また、マイナンバーカードがあると、その他の本人確認書類が不要です。
もし、マイナンバーカードを持っていない場合には、税務署で本人識別番号のための「ID・パスワード方式」を取得することでe-Taxが利用できます。
年末調整と確定申告の違いを理解しよう
「年末調整」とは、勤務先の会社が、従業員の1年間の正しい所得と税額を計算し、過不足を精算する手続きです。
会社員やアルバイト・パートなどの人は、月の給与が88,000円を超えると「所得税」が天引きされます。
これを源泉徴収といい、会社が従業員の代わりに、毎月の給与から所得税を天引きして、国に納める仕組みです。
源泉徴収で引かれる税金は「見込み」で計算されます。
そのため、年末に正確な納税額を計算する年末調整を行い、払いすぎた分は返金(還付)されます。逆に足りない場合には、追加で支払う必要があります。
確定申告とはちがい、年末調整は、勤めている会社がやってくれるので、必要な書類を提出するだけでOKです。
年末調整を受けた後でも申告が必要なケース
「アルバイトで確定申告が必要な人」のセクションで紹介した人のうち、下記の人は勤務先で年末調整をしたあとに、自分で確定申告をする必要があります。
- 複数の収入がある人
- 年末調整で反映されない控除を受けたい人
年末調整は、12月31日に在籍しているバイト先で手続きをしてもらい、源泉徴収票をもらいます。
さらに翌年の2月16日~3月15日に確定申告で、年末調整だけで調整できない収入や追加したい控除を申告しましょう。
確定申告をするから、年末調整をしなくていいわけではないので注意です。
よくある質問
ここでは、アルバイトをしている方が確定申告についてよく疑問に思うことを説明します。
確定申告をしないとどうなる?
A. 控除や還付金のチャンスを逃し、場合によってはペナルティがあるので注意
申告をしないと、控除や払いすぎた税金の還付を受けるチャンスを逃すことになるかもしれません。
源泉徴収された所得税があり、年末調整をしない場合は確定申告をしましょう。
また、確定申告をしなければならない人が、申告をしないでいるとペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」がかかることもあります。
ただし、もし申告を忘れてしまっても、自主的にすぐ申告すれば加算税は軽減されます。
申告期限から1月以内に自主的に申告をして、期限内に申告をする意思があったと認められれば、無申告加算税はかかりません。
年収が103万円以下なら確定申告は必要ない?
A. アルバイトは、1年間の給与の合計が103万円以下であれば、基本的に確定申告をする必要はない
アルバイトなどの給与所得者は、給与所得控除額55万円+基礎控除額48万円、あわせて103万円の控除が適用されます。
たとえば、1年間のバイト代が70万円の場合、そこから先ほどの控除できる金額を差し引くと、課税の対象になる所得は0になります。
そのため、納付する税金がなくなり、基本的に申告する必要はありません。
ただし、1年間の収入が合計103万円以下でも、月の給与が88,000円を超えていたり、兼業や副業で他の勤務先に「扶養控除申告書」を提出したりしている場合には、源泉徴収されています。
確定申告は任意ですが、確定申告をすることで納めすぎた税金が還付金として戻ってくる可能性があるので行うことをおすすめします。
もちろん、年末調整のみで済む場合は、確定申告は必要ありません。
副業でアルバイトをしている会社員はどうする?
A. 会社やバイト先から発行される「源泉徴収票」を合算して確定申告をしましょう
年末調整は、一番多く給料を受け取っている会社で申請するのが基本です。
本業の会社で年末調整をしてから、副業の源泉徴収とあわせて自分で確定申告をしましょう。
ただし、副業の所得が年間20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。
本業と副業の両方で源泉徴収されている場合、確定申告をすることで過剰に支払った税金が還付される可能性があります。
まとめ
確定申告や年末調整は、税金を正しく納めるため、払いすぎた税金を還付してもらうためにも大切な手続きです。
通常バイトやパートの人の多くは、勤務先の会社で年末調整の手続きをしてもらうことができますが、自分で確定申告をしなければならないケースもあります。
期限がありますので、この記事を参考に自分に必要な手続きがあるか確認し、早めに準備を進めましょう。
増田 浩美 増田浩美税理士事務所所長
女性ならではのきめ細やかな視点を強みに、企業から個人まで幅広い税務のサポートを行う。 ホームページ:http://www.zeimukaikei.jp/