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パートでも社会保険は加入必須?加入条件とメリット・デメリットを詳しく解説【社労士監修】

パートでも社会保険は加入必須?加入条件とメリット・デメリットを詳しく解説【社労士監修】

「社会保険に加入するべきか迷っている」「社会保険に加入しないといけないかを知りたい」こういった悩みを持つ、パートタイムで働いている人も多いのではないでしょうか。

この記事では、パートタイムの方が知っておくべき社会保険の基本から、加入条件、メリット・デメリット、そして加入手続きの流れまでを分かりやすく解説します。

社会保険とは

日本には、公的年金制度(国民年金や厚生年金保険)や医療保険制度(国民健康保険や健康保険など)という制度があります。

社会保険とは、全国民が加入する国民年金(基礎年金)とは別に、企業などで働く人が加入対象となる、厚生年金保険や健康保険のことです。

この社会保険ですが、フルタイムで働く人だけではなく、一定の条件を満たすアルバイトやパートの人も加入対象です。

加入対象の条件については後のセクション「加入対象になる人の条件」で説明します。

社会保険の加入対象

ここからは、社会保険の加入対象について解説します。

対象となる企業

自身が社会保険の対象となるかは、働いている企業によって変わります。

2024年10月より、社会保険加入の対象となる企業の範囲が拡大されました。

■ 社会保険の加入対象となる企業

社会保険の加入対象となる企業

そのため、働いている企業の従業員が51人以上の場合は、社会保険の加入対象者になる可能性があります。

従業員の数え方は、フルタイムで働く人と、週の所定労働時間及び月の所定労働日数がフルタイムの4分の3以上の人を、合わせた人数です。

加入対象になる人の条件

次に、加入対象になる人の条件を解説します。

まず、下記の条件に当てはまる人は、社会保険の加入対象です。

1週間の所定労働時間または1月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上である人

それ以外の方、いわゆる「短時間労働者」の場合、社会保険の加入対象となる条件が2段階あります。
それが、いわゆる「年収106万円の壁」と、「年収130万円の壁」です。

▼ 年収106万の壁

短時間労働者の場合、以下の5つの条件を全て満たす人が健康保険・厚生年金保険への加入対象です。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 所定内賃金が月額8.8万円以上(年収106万円以上)
  3. 2か月を超える雇用の見込みがある。
  4. 学生ではない。
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている。

年収が106万円を超えると社会保険加入の条件を一つ満たすことから、一般的に「106万円の壁」と言われています。

▼ 年収130万の壁

短時間労働者で、上記の5つの条件を全て満たしていなかったとしても、年収130万円を超えている場合は、労働者本人が国民健康保険や国民年金の保険料の支払い対象になります。

年収130万円を超えると、扶養者の社会保険の扶養から外れてしまうため、一般的に「130万円の壁」と言われています。

参照:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険適用の拡大」

扶養範囲と社会保険の関係

親や配偶者などの社会保険の被扶養者でいるためには、年収を130万円未満に抑える必要があります。

年収130万円を超えるだけで社会保険加入が必須になるわけではありませんが、扶養者の社会保険の扶養からは外れてしまいます。

そのため、扶養から外れたくない場合は、この「年収130万円の壁」を意識する必要があります。

下記に、扶養範囲と社会保険の関係について、パターン別で紹介します。

パターン①
130万円未満/週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の3/4以上の場合

短時間労働者ではないため、勤務先の社会保険に加入します。そのため、親や配偶者の社会保険の扶養から外れます。


パターン②
130万円以上/週の所定労働時間および月の所定労働日数は正社員の3/4未満、かつ先ほどの5つの条件を満たしていない場合

勤務先の社会保険に加入はできませんが、自身で国民健康保険と国民年金を支払う必要があります。
また、年収130万円を超えているため、親や配偶者の扶養を外れます。

パターン③
130万円以上/週の所定労働時間および月の所定労働日数は正社員の3/4未満、かつ先ほどの5つの条件を満たしている場合

勤務先の社会保険に加入します。
また、年収130万円を超えているため、親や配偶者の扶養を外れます。

パターン④
130万円未満/週の所定労働時間および月の所定労働日数も正社員の3/4未満の場合

20歳以上60歳未満の人は、国民健康保険及び国民年金は自分で加入手続きし、保険料を支払う必要があります。
ただし、配偶者の勤務先の社会保険の扶養になっている20歳以上60歳未満20歳以上60歳未満の配偶者(年収が130万円であり、配偶者の年収の2分の1未満の方)で厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている場合は、国民年金第3号被保険者となるため、厚生年金保険料及び健康保険料を自分で支払う必要はありません。

パートの人が社会保険に加入するメリット・デメリット

ここでは、パートなどの短時間労働者が社会保険に加入するメリットとデメリットについて解説します。

メリット:社会保険は保障が充実している

一般的に社会保険は、国民健康保険より保障が充実しています。
老齢年金、障害年金、遺族年金など、受け取れる年金額が増えることも大きなメリットです。

また、病休期間中給与の2/3相当を支給される「傷病手当金」や、産休期間中給与の2/3相当を支給される「出産手当金」をもらう権利があります。

参照:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」

デメリット:手取り額が減る可能性がある

扶養に入っている人などは、社会保険に入ると扶養から外れて、自身で保険料を納めることになるため、手取り額が減る可能性があります。

受け取る年金額や、支払い額が気になる場合は厚生労働省のサイトでシミュレーションができます。
厚生労働省:公的年金シミュレーター

また、手取り額が減ることを懸念して、多くの人が働き方の調整を行っていることは社会問題となっています。

そのため、政府は社会保険の適用拡大を進めるために、令和5年(2023年)10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」を開始しています。

主に事業者に対する支援のため、もし年収の壁を超えることが想定される場合は、勤めている企業に「年収の壁」に対する対応を確認することも選択肢の一つです。

参照:政府広報オンライン:「年収の壁」対策がスタート!パートやアルバイトはどうなる?

社会保険の加入手続きと必要な情報

社会保険の加入の手続きは、主に会社側が行いますが、従業員側が準備する情報もあります。

ここでは、社会保険の加入手続きと、必要な情報を解説します。

会社側が行う手続きの流れ

会社側が行う手続きとしては主に3つのステップに分けられます。

①従業員の社会保険加入条件を確認
従業員の労働時間や月額報酬を確認し、社会保険加入条件を満たしているかを判断します。
加入条件に該当する場合は、手続きを進める必要があります。

②必要書類の作成と提出
会社は「被保険者資格取得届」を所轄の年金事務所や健康保険組合に提出します。

③保険証の交付
手続きが完了すると、健康保険証が発行されます。これを従業員に渡すことで、保険加入が完了します。

参照:日本年金機構「従業員を採用したとき」

従業員が準備する情報

主な手続きは会社側で進めるため、従業員側で準備する情報は下記の3つです。

①マイナンバーまたは基礎年金番号
社会保険の手続きには、本人確認としてマイナンバーまたは基礎年金番号が必要です。
基礎年金番号は、年金手帳に記載されています。

②本人確認書類
身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)のコピーを提出する場合もありますので、確認しておきましょう。

③扶養家族の情報(該当する場合)
健康保険で扶養する家族がいる場合は、扶養家族の情報を提出する必要があります。
家族のマイナンバーや収入証明書も必要になる場合があります。

まとめ

この記事では、パートなどの短時間労働者と社会保険の関係について解説しました

  • 2024年10月より社会保険加入の対象となる企業の範囲が拡大された。
  • 「年収106万」と「年収130万」が社会保険や扶養に関わるライン
  • 社会保険加入のメリットは、年金の増額と手当金などの保障
  • 社会保険に加入することで、扶養に入っていた人は手取り額が少なくなる可能性がある
  • 社会保険の加入手続きは、会社が主に行う

社会保険の加入は、働いていくうえで重要な内容です。

自分が社会保険の加入対象なのか、入るとしたら手取り額がどうなるのかを確認したうえで、働くようにしましょう。

  • 荒武 慎一(あらたけ しんいち)
社会保険労務士、中小企業診断士

    荒武 慎一(あらたけ しんいち) 社会保険労務士、中小企業診断士

    昭和53年同志社大学卒業、富士ゼロックス株式会社を経て平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金をわかりやすく解説することで高い評価を得ている。(連絡先:0422-90-9990)

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