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年末調整と確定申告の違いを解説!受けられる控除や対象者、時期を紹介【税理士監修】

年末調整と確定申告の違いを解説!受けられる控除や対象者、時期を紹介【税理士監修】

年末や年明けには、一年間のあなたの所得や支払うべき税金を正確に計算しなければなりません。
そのために必要になるのが、年末調整と確定申告という手続きです。

会社員やバイトとして働いていると、年末調整だけで手続きが終わる人も多いですが、場合によっては確定申告が必要なこともあります。

この記事では、これらの手続きについて詳しく解説します。
また、正しく申請することで税金の負担を減らすことにつながる「控除」についても紹介します。

年末調整と確定申告の違いを理解しよう

年末調整と確定申告は、どちらも1年間の所得と税金を正しく計算するための大切な手続きです。

所得とは、収入から経費や控除を引いた残りの金額のことで、会社員やバイトの給与、フリーランスの売上などから必要な経費と控除を引いて計算します。

■ 課税対象になる所得の計算方法

この2つの手続きは、役割と対象者が違うので、自分が対象となる手続きはどらか確認しましょう。

年末調整とは?

年末調整は、最後の給与の支給時に、会社が1年間の正しい所得と税額を計算し、過不足を精算してくれる手続きです。

会社員やアルバイト・パートなどの従業員は、毎月の給与から「所得税」が天引きされています。
これを源泉徴収といい、見込みの年収から計算した所得税を、毎月の給与やボーナスから本人に代わって会社が納税します。

見込みの年収で天引きするため、源泉徴収で所得税を納めすぎていたり、反対に納める額が不足していたりといったケースがあります。

もしも多く払い過ぎていたら、その分の税金が返ってきます(還付)。
逆に少なければ、差額を払うことになります。

年末調整は、勤めている会社がやってくれるので、必要な書類を提出するだけでOKです。

■ 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告書の見本

参照:国税庁「給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告

年末調整で必要な書類

  • 扶養控除申告書

    扶養控除等の額(扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除)及び定額減税額の計算に含める扶養親族の人数を確認する書類。
    扶養親族等がいなくても、主たる給与の支払を受けている勤務先に提出。

  • 基礎控除申告書

    「基礎控除」の適用を受けるために提出する書類。

  • 保険料控除申告書

    生命保険料や地震保険料について控除の適用を受けるための書類。

確定申告とは?

確定申告は、年末調整とは違い、自分で1年間の全ての収入を申告して、最終的な税金を確定させる手続きです。

収入から経費や控除を差し引いた金額に対して、どれくらいの税金が必要か計算し、その額を申告します。

申告の際は「確定申告書」を作成し、申告する年の翌年2月16日~3月15日に税務署へ提出します。最近では、電子申告(e-Tax)を利用してパソコンやスマホからも申告できるようになりました。

■ 確定申告書の見本

参照:国税庁「申告書第一表・第二表【令和5年分以降用】(PDF/767KB)

年末調整と確定申告のどちらが必要?

給与をもらっている会社員やアルバイトの多くが、会社に年末調整を任せて手続きが完了します。しかし、すべての人がこれで完了するわけではありません。
特定の条件に当てはまる場合、確定申告が必要になることがあります。

ここでは、年末調整だけでよい人、確定申告が必要な人について解説します。

年末調整のみでOKな人

  • 年間所得2000万円以下で、給与以外の所得がない人
    もしあなたが会社で働いていて、他に収入がない場合、年末調整だけで手続きが完了します。
  • 給与以外の所得が20万円以下の人
    副業や投資で多少の収入があっても、その額が20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。
  • 年末調整で全ての控除が反映される人
    配偶者控除や扶養控除など、年末調整で控除される範囲内であれば、確定申告は必要ありません。

確定申告が必要な人

基本的に、自営業やフリーランスといった個人事業主には確定申告が必要です。
また、以下の条件に当てはまる場合は、会社員やバイト、パートも確定申告が必要になります。

  • 給与以外に20万円以上の所得がある人
    会社員でも副業で20万円以上稼いだ場合、確定申告をして税金を正しく計算しなければなりません。
  • 年間の給与所得が2000万円を超える人
    所得が2000万円を超える場合、給与所得者でも年末調整ではなく確定申告が必要です。
  • 医療費控除や寄付金控除を受けたい人
    年末調整で対応できない控除を受ける場合、確定申告で申請が必要です。


  • 不動産収入や株取引で利益がある人
    投資や不動産での利益がある場合、確定申告が必要です。


  • 懸賞や競馬などの一時所得がある人
    一時的に大きな収入を得た場合、確定申告が必要です。


  • 年度途中で退職した人
    年末まで勤務せず、退職した場合は年末調整を会社がしてくれないので、自分で確定申告を行う必要があります。

    年末までに転職した場合は、転職先で年末調整をすることができます。

  • 複数の勤務先から給与を受け取っている人
    複数の会社から給与をもらっている場合、それぞれの収入を合算して確定申告をする必要があります。

副業やバイトの収入が複数ある人はどうする?

副業やアルバイトなど、複数の収入がある場合、どうやって申告すればいいのか悩む人も多いのではないでしょうか?

ここでは、本業と副業がある場合や、アルバイトを掛け持ちしている場合の申告方法を解説します。

本業が会社員、副業がバイトの場合

本業が会社員で、副業としてバイトをしている場合、どちらの収入も給与所得となります。
会社やバイト先から発行される「源泉徴収票」を、合算して確定申告を行いましょう。

ただし、副業の所得が年間20万円以下であれば、確定申告は不要です。
その際、住民税の申告は副業による所得が20万円以下であっても必須です。

本業と副業の両方で源泉徴収されている場合、確定申告をすることで過剰に支払った税金が還付される可能性があります。

本業が会社員、副業が事業所得や雑所得の場合

本業は会社員で、副業としてフリーランス(自営業)をしている場合、その収入は事業所得や雑所得となります。
本業の源泉徴収票と、副業の事業所得や雑所得を合わせて確定申告を行いましょう。

  • 事業所得

    フリーランスや自営業としての副業収入は事業所得になります。

    必要経費を引いた金額が課税対象となるため、経費(たとえば、仕事で使う道具や交通費など)をしっかり管理して、領収書を保管しておきましょう。

    また、事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は、給与所得や不動産所得と損益通算できます。

  • 雑所得

    趣味の延長で得た収入などが雑所得になります。
    雑所得でも経費は差し引けますが、事業所得より控除できる範囲が狭い点に注意が必要です。

    雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の所得の金額と損益通算はできません。

アルバイトを掛け持ちしている場合

アルバイトを掛け持ちしている場合、それぞれのアルバイト先から給与が支払われます。
全てのアルバイト先から源泉徴収票をもらい、それらを合算して確定申告を行いましょう。

ただし、すべての給与を合わせても103万円以下の場合は、確定申告は不要です。

もし年収が103万円以下でも、アルバイト先で源泉徴収されている場合、確定申告をすることで、払い過ぎた税金が返ってくる可能性があります。

年末調整や確定申告で受けられる主な控除の種類

税金を計算する時に、「控除」と呼ばれる収入から差し引ける金額があります。

ここでは、年末調整や確定申告の際に受けられる主な控除を紹介します。
控除によって、払うべき税金の負担を減らすことができるため、しっかり確認しましょう。

基礎控除

基礎控除とは、すべての納税者が受けられる控除で、収入が一定額以下の場合に適用されます。

合計所得が2400万円以下の場合、48万円の控除を受けることができます。
それ以上の所得がある場合も、2500万円まで所得に応じて控除が適用されます。

参照:国税庁「基礎控除

扶養控除

扶養控除は、子どもや親などで「年間所得が48万円(給与収入は103万円)以下の16歳以上の親族」を扶養している場合に適用されます。

扶養する家族の年齢や一緒に住んでいるかどうかによって、38~58万円の控除を受けることができます。

参照:国税庁「扶養控除

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者控除は、配偶者の年間所得が48万円(給与収入は103万円)以下の場合に適用されます。
控除を受ける本人の年収と配偶者の年齢によって、13~48万円の控除を受けることができます。

もし配偶者の収入が増えても、年間所得が133万円以下であれば「配偶者特別控除」を受けられます。

参照:国税庁「配偶者控除」「配偶者特別控除

社会保険料控除

社会保険料控除は、1年間に納めた「健康保険料」や「介護保険料」「厚生年金保険料」などの社会保険料の全額が控除されます。

自分の分だけでなく、扶養している家族の社会保険料を支払っている場合も、その額を控除できます。

参照:国税庁「社会保険料控除

生命保険料控除

生命保険料控除は、一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に適用されます。

それぞれの保険ごとに上限があり、すべてを合わせると最大12万円まで控除されます。

参照:国税庁「生命保険料控除

勤労学生控除

勤労学生控除は、学費や生活費などのためのバイトで収入を得ている学生に適用されます。
一定の条件を満たすと、所得税は27万円が所得から差し引かれ、税金の負担が軽くなります。

参照:国税庁「勤労学生控除

確定申告でのみ受けられる所得控除

確定申告でのみ申請ができる控除は、以下の通りです。

  • 医療費控除

    1年間に支払った医療費が一定額を超える場合に受けられる控除です。

  • 寄附金控除

    寄附金控除は、特定の寄附(ふるさと納税など)を行った場合に受けられる控除です。

    ※本来確定申告が不要な人で、ふるさと納税した自治体が5つ以下であれば、ワンストップ特例制度を利用することで確定申告が不要となります。

  • 住宅ローン控除

    住宅を購入した場合、住宅ローンの残高に応じて受けられる控除です。

    初年度のみ確定申告が必要で、その後の年は年末調整で適用されます。

  • 雑損控除

    災害や盗難などで損害を受けた場合に受けられる控除です。

これらは年末調整では反映されないため、忘れずに確定申告で申請しましょう。

参照:国税庁「ケース別の情報|令和5年分 確定申告特集


詳しい控除の条件や控除額、ここで紹介していない控除については、国税庁の「所得控除のあらまし」をご覧ください。

年末調整と確定申告の違い一覧

年末調整

確定申告

対象者

給与所得者(会社員・バイト、パートなど)

事業所得者(個人事業主など)

就業先で年末調整の対象でない人

複数からの給与がある人

給与所得以外の所得がある人

年末調整で処理できない控除を受けたい人

手続きの時期

毎年12月

毎年2月16日〜3月15日

手続きの内容

会社が手続きを代行

必要書類を会社へ提出

自分で手続きが必要

税務署へ確定申告書などを提出

控除の範囲

基礎控除

扶養控除

配偶者控除・配偶者特別控除

社会保険料控除

生命保険料控除

勤労学生控除

など

年末調整でできる控除に加え

医療費控除

寄附金控除

住宅ローン控除

雑損控除

など

年末調整・確定申告をしないとどうなる?

年末調整や確定申告は、正確な所得と税金を把握するための重要な手続きです。
もし申告をしないと、以下のようなリスクがあります。

  • 控除や還付金が受けられない
    控除や払いすぎた税金の還付を受けるチャンスを逃します。
  • 無申告加算税や延滞税が発生する
    確定申告をしなければ、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」がかかることがあります。

税額に応じて50万円までは15%、50万円を超え300万円までは20%、300万円を超えると30%の無申告加算税が課せられます。

ただし、もし申告を忘れてしまっても、自主的にすぐ申告すれば、無申告加算税は5%に軽減されます。

申告期限から1月以内に自主的に申告し、期限内申告をする意思があったと認められる場合には、無申告加算税はかかりません。

まとめ

この記事では、「年末調整」と「確定申告」について解説しました。

年末調整と確定申告は、1年間の所得と税金を正しく計算するために欠かせない手続きです。
これらを適切に行うことで、税金の払いすぎを防ぎ、還付金を受けることもできます。

申告を忘れるとペナルティがかかることもあるため、期限を守り、自分に必要な手続きを確認しておきましょう。

  • 増田 浩美
増田浩美税理士事務所所長

    増田 浩美 増田浩美税理士事務所所長

    女性ならではのきめ細やかな視点を強みに、企業から個人まで幅広い税務のサポートを行う。 ホームページ:http://www.zeimukaikei.jp/

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