退職を申し出るのは何日前?法的ルールと円満退職にベストなタイミング
会社や上司に退職をどう伝える?退職の意思の伝え方、タイミング、ポイントを紹介
退職することを決めたはいいものの、それを会社に伝えるのは気が重く、不安になりますよね。
この記事では、退職の意思を伝えるためのポイントを紹介します。「いつ、だれに、どこで、どうやって」伝えればいいのか、伝える際に気を付けるべきことは何か。万全の準備をして、退職の意思を伝えられるようにしましょう。
退職を伝えるタイミングは?
今いる会社を退職する決心をしたとき、「いつ上司に話しを切りだせばいいのだろう?」と迷いますよね。
退職の意思を伝えるタイミングはとても大切です。
自分の都合だけでなく、会社や上司、同僚へ配慮したタイミングで伝えることで、円満に退職しやすくなります。
退職の意思を伝えるのは退職の1~3カ月前
退職を伝えるタイミングは、会社の就業規則を確認しましょう。
「退職予定日の〇日前までに退職の意思を伝えること」のように、退職に関するルールを定めている会社がほとんどです。
一般的には、退職する1~3カ月前が多いです。
これだけの期間があれば、会社も後任者を探したり、仕事の引き継ぎを行ったりする時間を確保できます。また、有給休暇など、あなた自身の計画も立てやすくなります。
退職願は退職の意思を伝えるとき
退職願は、会社に退職の意志を伝えるための書類です。
一般的には、上司に退職の意思を伝える際に直接手渡します。
退職の意思は、口頭でも伝えられますが、書面で渡すことで、退職の意志が固いことや、あなたから会社へ退職を申し入れた証拠になります。
退職届は退職の合意ができてから
退職届は、退職が確定して退職日が決まったあと、会社に提出する書類です。
就業規則に提出先や提出するタイミングが記載されている場合が多く、会社ごとに決まったフォーマットがあることが多いです。
退職は誰にどこで伝えるべき?
退職の意思を「誰に、どこで」伝えるべきかも、あらかじめおさえておきましょう。
正しい相手にしっかりと退職の意思を伝えることで、トラブルなく退職の手続きを進めやすくなります。
直属の上司に退職の意思を伝える
退職の意思は、まず直属の上司に直接会って伝えるのが基本です。
- 必ず事前にアポイントを取ってから伝える
- 上司が忙しくない時間帯に面談を設定する
- 直属の上司を通り越して、さらに上の上司に伝えるのはNG
上司に伝える際には、これらのポイントを守りましょう。
アポイントを取るときは、メールや口頭で「お忙しいところ恐縮ですが、今後のことで大切なご相談があり、ご都合のよろしい時にお時間をいただけますでしょうか」と丁寧にお願いします。
直属の上司が、あなたの退職意思を他の人から間接的に聞かされてしまうと、快く思わないでしょう。
さらに、上司は管理能力を問われてしまったりと、ますます円満退職が難しくなるかもしれません。
二人きりで静かに話せる場所で伝える
退職の話は、二人きりで静かに話せる場所で伝えるのが望ましいです。
退職はデリケートな話題です。他の社員に聞かれてしまうかもしれない場所は避け、周囲の目を気にせずに話せる会議室などの個室を使いましょう。
退職の伝え方とポイント
ここからは、「どのように」退職することを伝えればよいのか紹介していきます。
退職を伝える例文
例文1:キャリアアップの場合
お忙しいところお時間をいただきありがとうございます。この度、自分が外でどれだけやっていけるのか、新しい環境で挑戦をしたいと考え、転職を決心しました。
これまでの、○○さんのご指導やサポートに心から感謝しております。
退職は○月末とさせていただきたいと考えています。現在担当しているプロジェクトについては、引き継ぎ計画を作成し、スムーズな移行ができるよう努めます。
ご迷惑をおかけしますが、退職について相談させて頂けますでしょうか?
例文2:家庭の事情の場合
相談のお時間をいただきありがとうございます。大変申し上げにくいのですが、家庭の事情により、仕事を続けることが難しくなってしまいました。
そのため、○月末をもって退職させていただけないかのご相談です。これまで大変お世話になったこと、心から感謝しています。
現在進行中の業務については、後任の方が円滑に業務を引き継げるよう準備を進めてまいります。転職先は未定ですが、家庭の事情に専念する予定です。
ご迷惑をおかけしますが、ご理解いただければ幸いです。
例文3:健康上の理由の場合
お忙しいところ申し訳ございません。このところの私の通院や病休に、ご配慮いただきありがとうございます。
最近、体調がすぐれない日が多く、治療に専念した方がいいという医師からのアドバイスもあり、退職したいと考えています。そのため、○月末をもって退職したいとおもっており、ご相談させていただきたいです。
現在の業務については、引き継ぎ計画を作成し、後任の方がスムーズに業務を引き継げるよう努めます。これまでたくさんのことをご指導いただいたこと、心から感謝しております。
ご迷惑をおかけしますが、ご承諾いただけますでしょうか。
伝えるべき内容
退職を伝える際には、以下の内容を伝えましょう。
- これまでの感謝の気持ちとお詫びの言葉
- 退職するポジティブな理由や具体的な理由
- 希望する退職日
- 自分の関わっている業務の状況や引き継ぎ
これらの内容をしっかりと伝え、「退職の意思が強いこと」が上司に分かってもらえるようにしましょう。
優柔不断な態度やあいまいな退職理由では、思いとどまるように説得できると思われて、退職までの手続きが長引きかねません。
しかし、横柄な態度はNGです。これまで一緒に働いてきた人への感謝と、退職で負担をかけることへのお詫びを忘れずに、謙虚な態度で相談しましょう。
伝える必要のないこと
一方で、以下の内容は伝える必要はありません。
- 会社への不平不満
- 転職先の詳細
- 転職以外の退社後の予定
特に、会社への不平不満は口にしないように気を付けましょう。それに対する改善案を提案されて、引き止められてしまうかもしれません。
トラブルを避けるための注意点
退職に関するトラブルを避けるためには、いくつかの注意点があります。
スムーズな退職のために、これらのポイントをおさえておきましょう。
同僚や取引先へは上司のあとに伝える
同僚や取引先には、上司に退職の意思を伝え、合意してもらえたあとに知らせるのが基本です。
上司より先に伝えてしまうと、人づてに上司の耳に入ってしまったり、現場や取引先の業務が混乱する可能性があります。
引き止められにくい伝え方と時期を意識する
引き止められて、退職時期を遅らせないためにも、引き止められにくい退職理由や退職しやすいタイミングを工夫することも大切です。
退職理由は「家庭の事情で」など会社側が改善できない理由や、「新しい挑戦をしたい」などの前向きな理由を伝えるようにしましょう。
また、繁忙期など引き継ぎが難しい時期を避けて、退職の意思を伝えることも必要です。
競業避止義務の確認
競業避止義務とは、退職した後、前の会社と同じような仕事を別の会社でしないようにするルールのことです。
退職後に転職や独立をする場合、確認しておきたいルールです。
このルールがある理由は以下の2つです。
- 企業の秘密を守る
前の会社で知った大事な情報や技術が、新しい会社に流れないため
- 不正競争を防ぐ
前の会社の取引先や顧客を持っていってしまうのを防ぎたい
退職したあとも同じ業界で働かないことを約束するには、前もって会社と社員の間で「競業避止義務」の契約を結んでおく必要があります。
この義務は、会社と退職者の両方の権利を考えつつ適用されるので、会社が一方的にルールを押し付けることはできません。
また、退職者にも自分の好きな仕事を選ぶ自由(職業選択の自由)があるため、会社の利益のためだけに退職者の自由を奪うようなこともできません。
実際に競業避止義務に当てはまるかどうかは、最終的には裁判所が判断します。
たとえば、退職者が前の会社の大事な秘密を持っている場合などは、義務が必要な合理的理由と判断されやすいです。
監修:荒武 慎一氏(社会保険労務士 / 中小企業診断士)
まとめ
この記事では、退職の意思の伝え方について紹介してきました。
- 退職を伝えるタイミングは、就業規則に則って1~3カ月前に伝える
- 直属の上司にアポイントを取って退職の意思を伝える
- 二人きりで静かに話せる場所で伝える
- 伝えるべき内容をおさえて伝える
- トラブルをさけるように対策する
退職することを伝えるのは、気が重いかもしれませんが、あなたの決めた次のステップにすすむために必要なことです。
この記事を参考に、適切なタイミングで、退職したい理由をしっかり伝え、トラブルを避けるための準備を整えて、退職の意思を伝えられるようにしましょう。
荒武 慎一(あらたけ しんいち) 社会保険労務士、中小企業診断士
昭和53年同志社大学卒業、富士ゼロックス株式会社を経て平成27年アラタケ社会保険労務士事務所を開設。助成金セミナーを各地で開催し、難解な助成金をわかりやすく解説することで高い評価を得ている。(連絡先:0422-90-9990)